マクドナルドの「ポテト戦略」:なぜついセットで頼んでしまうのか?

「ポテトもご一緒にいかがですか?」

マクドナルドのレジで、こんな問いかけをされた経験は誰しもあるでしょう。そして気がつけば、単品で注文するつもりだったのに、ポテトとドリンクがついた「セットメニュー」にしてしまった——。

なぜ私たちはマクドナルドの戦略に乗せられてしまうのでしょうか? これは単なる偶然ではなく、緻密に計算されたマーケティング手法によるものです。本記事では、マクドナルドの「ポテト戦略」がどのように消費者心理に働きかけ、売上を最大化しているのかを紐解いていきます。

1. 「ポテト戦略」とは?

「ポテト戦略」とは、マクドナルドが長年採用している販売戦略の一つで、顧客に対してフライドポテト(およびドリンク)をセットで注文するよう誘導する手法を指します。

この戦略の核心は、**「単品よりもセットのほうがお得」**という印象を与え、顧客の購買意欲を高めることにあります。実際に、マクドナルドのメニューを見ると、バーガー単品よりも「セット」のほうが割安感がある価格設定になっており、自然と「セットのほうがお得だ」と思わされるのです。

では、なぜマクドナルドはポテトをセット販売に組み込むのでしょうか? その理由をマーケティング視点で探っていきましょう。

2. ポテトがセット販売に組み込まれる理由

(1) 原価率が低く、利益率が高い

ポテトの原価は低く、調理に手間もかかりません。それでいて販売価格は比較的高めに設定できるため、セット販売に組み込むことで利益率を向上させることができます。

例えば、ハンバーガーの原価率が40%だったとしても、ポテトの原価率は20%以下と低く抑えられます。つまり、ポテトをセットにすることで、全体の利益率を引き上げることができるのです。

(2) 食事の満足感を向上させる

単品のハンバーガーだけでは「少し物足りない」と感じる人も多いですが、ポテトをつけることで満足感が増します。人間の味覚は「塩分+脂肪」に強く引き寄せられるため、ポテトの塩味と油の組み合わせは、中毒性が高いのです。

さらに、**「サクサク」「カリッとした食感」**は、食べること自体を楽しくし、また次も注文したくなる要素となります。この「食べる体験」の満足度を高めることで、リピート率向上にもつながっているのです。

(3) 「お得感」と「心理的ハードルの低さ」を利用

単品よりもセットのほうがお得に見える価格設定がされているため、多くの人がセットを選びます。例えば、単品でハンバーガーを注文した後に「ポテトもいかがですか?」と聞かれると、**「たった○○円を追加するだけで、セットにできるならお得だ」**と感じる心理が働きます。

また、最初にセットを注文することを前提としたメニュー構成になっているため、わざわざ単品だけを選ぶのが「損しているように感じる」状態になっています。このように、顧客の心理的ハードルを下げ、セット販売へと誘導する仕掛けが施されているのです。

3. マクドナルドの「ポテト戦略」がもたらす集客効果

マクドナルドのポテト戦略は、単なるアップセル(追加購入の促進)にとどまらず、顧客のリピート率や満足度を高める重要な役割を果たしています。

(1) 期間限定キャンペーンによる集客

「ポテト全サイズ150円」などのキャンペーンは、来店を促す強力なフックになります。ポテトを目当てに来店した顧客が、ついでにバーガーやドリンクも購入することで、客単価の向上にもつながります。

(2) セットメニューによる売上最大化

セット販売を前提にした価格戦略は、顧客単価を引き上げ、売上全体を伸ばすことに貢献しています。仮に全員が単品注文をした場合と比べると、セット販売の導入によって1人あたりの売上が数百円単位で増加するのです。

(3) SNSを活用した拡散戦略

ポテトはSNS上で話題になりやすい商材の一つです。例えば、「ポテトが揚げたてで最高!」といった投稿が広がることで、自然と口コミによる集客が発生します。また、ポテトに関するユーモアのある投稿(例:「ポテトを一人で食べる幸せ」)なども拡散されやすく、ブランドの認知拡大にも寄与しています。

4. まとめ:ポテト戦略はなぜ成功するのか?

マクドナルドの「ポテト戦略」は、単なるアップセルの手法ではなく、消費者の心理を巧みに利用したマーケティング戦略の結晶です。

1. 原価率が低く利益率が高い

2. 「満足感」と「食感」でリピート率を向上

3. 「お得感」を演出し、セット注文を促す

4. キャンペーンやSNS戦略で集客を強化

これらの要素が組み合わさることで、「ついポテトを頼んでしまう」という現象が生まれ、結果的に売上最大化へとつながっているのです。

次回マクドナルドに行ったとき、あなたはこの「ポテト戦略」に抗えるでしょうか? それとも、やはり「ポテトもセットで…」と注文してしまうのでしょうか?