
マーケティングや集客を考えるうえで、多くの企業が「選択肢を増やせば売上が伸びる」と考えがちです。たとえば、飲食店ならメニュー数を増やし、ECサイトなら豊富な商品ラインナップを用意しようとするでしょう。しかし、選択肢が多すぎると逆に消費者の購入意欲が下がることがあるのをご存じでしょうか?
この現象を示したのが「ジャムの法則(選択肢過多のパラドックス)」です。本記事では、ジャムの法則の具体的な内容や、マーケティング・集客においてどのように活用できるのかを詳しく解説します。
ジャムの法則とは?
ジャムの法則とは、**「選択肢が多いと、消費者の関心は高まるが、最終的な購買行動は減少する」**という心理効果のことです。
この法則は、2000年にアメリカの心理学者シーナ・アイエンガーとマーク・レパーが実施した実験によって提唱されました。実験の内容は以下の通りです。
1. スーパーでのジャムの試食販売
• Aパターン:24種類のジャムを用意
• Bパターン:6種類のジャムを用意
2. 結果
• 24種類のジャムを見た人の60%が試食をしたが、実際に購入したのは3%
• 6種類のジャムを見た人の40%が試食をし、実際に購入したのは30%
この実験から、選択肢が増えると一見魅力的に思えるものの、最終的な意思決定が難しくなり、購入に至らないということが分かりました。
選択肢が多すぎると買えない理由
なぜ選択肢が多すぎると、人は購買行動を起こしにくくなるのでしょうか?
1. 決断疲れ(Decision Fatigue)
選択肢が多いと、どれを選べばよいのか考えるのにエネルギーを消耗します。決断を下すことに疲れてしまい、「選ばない」という選択肢を取ることが多くなるのです。
2. 後悔の可能性が高まる
選択肢が多いほど、「もっと良い選択肢があったのではないか?」と後悔する可能性が高まります。この心理的負担が、購入を躊躇させる要因になります。
3. 比較が難しくなる
人は「AとB」くらいなら比較できますが、「AとBとCとDとE…」となると、何がベストなのか分からなくなります。情報処理能力の限界を超えると、選択を避ける傾向が生まれます。
4. 期待値が上がりすぎる
選択肢が増えると、無意識に「最適な選択肢があるはず」と期待してしまいます。しかし、実際にはどれを選んでも完璧とは言い切れず、満足度が下がることがあります。
マーケティングや集客における「ジャムの法則」の活用方法
1. 商品やサービスの選択肢を適度に絞る
「できるだけ多くの商品を提供したい」と思うのは自然ですが、選択肢を増やしすぎると逆効果になることがあります。
例:ECサイトの場合
• 悪い例:100種類のTシャツを並べる
• 良い例:10種類の「人気デザイン」に絞る
特に初めて訪れる顧客には、シンプルな選択肢を提示することが重要です。
2. 迷わせないためのガイドを用意する
選択肢が必要な場合でも、消費者がスムーズに選べるように工夫しましょう。
例:レストランのメニュー
• 「人気ランキング」や「店長のおすすめ」を明記する
• 「まずはこれを試してほしい!」というイチオシメニューを目立たせる
選択肢を整理し、「選びやすさ」を提供することで、購入率を向上させられます。
3. 限定感を出して選択肢を絞る
選択肢を減らす方法として、「期間限定」や「数量限定」を活用するのも有効です。
例:アパレルブランドの集客施策
• 「今季限定の3色のみ販売」
• 「毎月3つの新作だけを発表」
限定感を演出することで、「迷う時間」を短縮し、即決を促せます。
4. サブスクリプションモデルを活用する
選択肢の多さを解決する方法の一つが、サブスクリプションサービスです。
例:コーヒーのサブスク
• 「毎月おすすめのコーヒーを3種類お届け!」
• 「あなたの好みに合わせて、最適なコーヒーを選びます」
このように、選ぶ手間を省いて提供することで、消費者の負担を軽減できます。
まとめ:選択肢を減らすことが売上アップにつながる
「選択肢を増やせば売れる」という考え方は、一見正しいように思えます。しかし、ジャムの法則が示すように、選択肢が多すぎると逆に購買率が下がるのです。
マーケティングや集客においては、以下のポイントを意識しましょう。
1. 選択肢を適度に絞る(多すぎると決断できない)
2. 消費者が迷わない仕組みを作る(ランキングやおすすめを活用)
3. 限定感を演出する(「期間限定」「数量限定」など)
4. サブスクで選択の負担をなくす
選択肢を整理し、消費者がスムーズに購入できる環境を整えることで、売上アップにつながります。
「選択肢を増やすのではなく、選びやすくすることが重要」という視点を持ち、マーケティング戦略を考えてみてください。