
近年、メタバースは新たなマーケティングの舞台として急速に注目を集めています。特に若年層を中心に広がる仮想空間での交流は、企業にとっても新たな集客手段として魅力的な可能性を秘めています。今回は、世界中で1億人以上のユーザーを抱えるメタバースプラットフォーム「ZEPETO(ゼペット)」を事例に、メタバース時代のマーケティング手法と集客戦略について詳しく掘り下げていきます。
ZEPETOとは?運営会社とその特徴
ZEPETOは、韓国のIT企業「NAVER Z Corporation(ネイバーゼット)」が運営する3Dアバターを活用したメタバースプラットフォームです。NAVER Zは、韓国最大手の検索エンジン「NAVER(ネイバー)」の関連会社であり、親会社のNAVERはLINEの親会社でもあります。
ZEPETOは、スマートフォンアプリを通じて誰でも簡単に3Dアバターを作成し、バーチャル空間で他のユーザーとコミュニケーションを取ることができる点が特徴です。特に、Z世代(10〜20代前半)のユーザーが多く、ファッションやトレンドに敏感な層が中心となっています。
このプラットフォームでは、ユーザーは自分のアバターをカスタマイズし、バーチャル空間で他のユーザーと交流することが可能です。また、ブランドやクリエイターがオリジナルの衣装やアイテムを販売することで、メタバース内でのマネタイズも実現しています。
ZEPETOを活用したマーケティング手法とは?
ZEPETOがマーケティングの場として注目される理由の一つは、そのユニークな集客構造です。SNSと同様にユーザーがコンテンツを発信し、拡散する仕組みが整っているため、企業が自然にユーザーとの接点を持つことができます。ここでは、ZEPETOを活用した代表的なマーケティング手法を紹介します。
1. ブランド専用のバーチャル空間を作成する
企業がZEPETO内にオリジナルのバーチャル空間を作成し、ブランドの世界観をユーザーに体験してもらう方法です。たとえば、GUCCIやNIKEといった世界的なブランドは、ZEPETO内に自社の仮想空間を展開し、ユーザーがアバターを通じて商品を試着できるようにしています。
これにより、従来の広告とは異なり、ユーザーがブランドの世界に「参加」する体験を提供することができます。また、ZEPETO内で撮影した画像や動画がSNSに拡散されることで、より自然な形での集客につながります。
2. アバター向けのブランドアイテムを販売する
ZEPETOでは、ブランドがオリジナルの衣装やアクセサリーをデザインし、ユーザーに販売することができます。これは、実際の商品を販売するのではなく、アバター向けのデジタルアイテムを販売することで、バーチャルな経済圏を生み出すマーケティング手法です。
たとえば、DIORはZEPETO向けにバーチャルファッションを展開し、ユーザーが自分のアバターにDIORの洋服を着せることができるようにしました。これにより、リアルなファッションとバーチャルファッションを融合させ、ブランドの認知度を向上させる効果が生まれています。
3. インフルエンサーとのコラボレーション
ZEPETO内には、多くの人気インフルエンサーが存在し、彼らの影響力を活用することでブランドの露出を増やすことが可能です。企業は、ZEPETOのクリエイターや人気ユーザーとコラボレーションし、ブランドアイテムを着用した投稿を促進することで、効果的な集客を図ることができます。
この手法は、YouTubeやInstagramのインフルエンサーマーケティングと同様の仕組みですが、ZEPETO独自のバーチャル空間内で行われるため、より没入感のあるブランド体験を提供することができます。
ZEPETOのマネタイズ戦略とは?
ZEPETOの大きな特徴の一つは、ユーザーがデジタルアイテムを購入することで収益を生み出すマネタイズモデルです。具体的には、以下のような仕組みで収益化が行われています。
1. アバターアイテムの販売
ZEPETO内では、ユーザーが自分のアバターを自由にカスタマイズできるように、ブランドや個人クリエイターが衣装やアクセサリーを販売しています。特に、人気ブランドが提供するアイテムは高い人気を誇り、ユーザーが積極的に購入することで大きな収益が発生します。
また、ZEPETOはクリエイターエコノミーを支援しており、個人クリエイターでもオリジナルアイテムを販売できる仕組みを提供しています。これにより、企業だけでなく個人もZEPETO内でビジネスを展開できるようになっています。
2. プレミアムコンテンツの提供
ZEPETOでは、特定のブランドやイベント向けにプレミアムコンテンツを提供することも可能です。たとえば、特定のブランドのバーチャルイベントに参加するためには有料チケットが必要となるケースもあります。これにより、リアルイベントと同じように、バーチャル空間でも収益を上げることができるのです。
メタバースマーケティングの未来とは?
ZEPETOをはじめとするメタバースプラットフォームは、今後さらに進化し、新しいマーケティング手法を生み出していくと考えられます。特に、以下のようなトレンドが今後のマーケティングに影響を与える可能性があります。
1. より高度なパーソナライズ
AIを活用したパーソナライズが進み、ユーザーごとに最適なマーケティングが可能になります。
2. NFTとの連携
デジタルアイテムがNFTとして所有権を持つようになり、さらに経済圏が広がる可能性があります。
3. 企業のメタバース進出の加速
さまざまな業種がメタバース空間に進出し、新しい形の集客モデルが登場するでしょう。
メタバース時代のマーケティングは、単なる広告ではなく「体験」を重視したものへとシフトしています。今後もZEPETOのようなプラットフォームを活用し、ブランドの世界観をバーチャル空間で表現することが、企業にとって重要な集客戦略となるでしょう。